ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-

盛り上がっている女の子たちの間から、わたしのほうに移動してくる。


「……ね、愛花はどう思う?」

「え、わたし?」

「聞こえちゃったよね、錦のこと。やっぱり、やめとくべきかな……」


真剣に問いかけられて、わたしはうーん、と唸る。


「でも、汐里ちゃんは、錦くんのこと今も好きなんでしょ?」

「……うん。……大好き」


ためらいながらもそう告げた汐里ちゃんの頬は、ピンク色に染まっていた。


……可愛い……。

わたしがキュン、ってなっちゃったよ。


「そうだなあ……わたしは、好きなの、そんなにすぐやめられないかな」


考えて、結局そんな答えしか出てこなかった。


……あれ。

これじゃあ、ただのわたしの感想だ。


大したことも言えず申し訳なくなって、謝ろうとしたけれど、反対に汐里ちゃんは、パッと顔を明るくして、さらにくっついてきた。
< 86 / 405 >

この作品をシェア

pagetop