ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「やっぱ、そうだよねっ。もうちょっと頑張ってみる」
……よかった。
元気付けることはできたみたいだ。
へへ、と笑顔を浮かべた彼女に、わたしはガッツポーズをして見せる。
ありがとー、と返してくれた汐里ちゃんが、わたしの落書きに混じって、変な動物を書き加えてきた。
……猫?
クマ……犬?
だんだんと形になっていく落書きに首を傾げていると、
「……いつまで待ったらいいのかなあ」
ぼそり、とこぼされた呟きに、わたしは息を呑んだ。
なんて返事をしてあげればいいかわからず、迷っている間に、汐里ちゃんの小さな声は笛の音にさらわれてしまった。
そのあとすぐ、測定が終わった美月がわたしたちに加わって、錦くんの話題は終了した。
……完成された猫みたいなクマみたいな犬の動物は、どこか寂しい顔をしているように見える。
——いつまで、待ったらいいか……。
それは、今、わたしの一番知りたいことでもあった。