ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
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「体育祭、来月なんだな」
洗い物をしていると、おーちゃんが唐突に言った。
その手元には、体育祭のプログラムが握られている。
……そういえば、もらってそのまま、鞄のポケットに差し込んで持って帰ってきたんだった。
どうやらたまたま目に入って、気になったみたいだ。
「そうなの。おーちゃん、その日——」
と、予定を聞こうとして、開催日が平日だったことを思い出す。
「仕事だよね」
わたしの問いかけに、おーちゃんは残念ながら、と肩をすくめた。
パラリ、とプログラムをめくる音がする。
「体育着姿のお前、見たかったな」
なんとなしに付け足された言葉に、わたしは思わず眉を寄せた。
「……え、なに。その反応」
「だって、なんか……変態っぽくてやだ」
「……」