ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


***


「体育祭、来月なんだな」


洗い物をしていると、おーちゃんが唐突に言った。

その手元には、体育祭のプログラムが握られている。


……そういえば、もらってそのまま、鞄のポケットに差し込んで持って帰ってきたんだった。


どうやらたまたま目に入って、気になったみたいだ。


「そうなの。おーちゃん、その日——」


と、予定を聞こうとして、開催日が平日だったことを思い出す。


「仕事だよね」


わたしの問いかけに、おーちゃんは残念ながら、と肩をすくめた。

パラリ、とプログラムをめくる音がする。


「体育着姿のお前、見たかったな」


なんとなしに付け足された言葉に、わたしは思わず眉を寄せた。


「……え、なに。その反応」

「だって、なんか……変態っぽくてやだ」

「……」

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