転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「ふふ、また眠くなっちゃう。……私、ちょっと着替えてきますね。汗かいちゃって」
「わかった」


 春人の手のひらをするりと抜けて、結乃はソファーから立ち上がった。リビングを出ると、着替えのある寝室へと向かう。

 うなされていたせいか、特に上半身が汗に濡れてスースーしていた。ウォークインクローゼットに置いてあるチェストから、新しく下着を取り出す。


(そういえば……ユノ()はあのとき、あの場所で死んでしまったけれど──ハルトは、あの世界でどんなふうに生涯を終えたんだろう)


 まさか、自分と同じ戦争で命を落としたのだろうか。
 それとも長く生きて、天寿を全うしたのだろうか。
 いくら考えてみたところで、答えは知りようがないけれど。


(……私よりずっと、長生きしてくれてたならいいな)


 着替えを終え、寝室をあとにする。

 脱衣場の洗濯カゴに先ほど脱いだ下着を入れたところで、開けっ放しにしていたドアの向こうから来客を告げるチャイムが耳に届いた。春人がドアホンで応答する声も、僅かに聞こえる。

 宅配便だろうか。そんな予定あったかなと思いつつ脱衣場を出ると、ちょうど春人がリビングから廊下に顔を覗かせた。


「結乃……」
「あ、届け物? 私出ますか?」


 そう言って玄関に向かいかけた結乃を、なぜか渋い表情をした春人が止める。


「違う。俺の……友人が、来てる」
「え?! あっもしかして、一緒に起業されたあの……?」
「ああ。近くまで来たから、寄ったらしい」


 会話の間、春人はずっと顔をしかめっぱなしである。

 突然の来客がそんなに不服なのか。もしくは、相手が悪いのか。

 とはいえ、あまりここでもたもたしている暇はないだろう。結乃は焦る。
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