転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
なぜだろう。こんなにも、胸の奥にフツフツとした怒りのようなものを覚えるのは。
それまで黙って騎士たちの後方を歩いていたハルトだったが、とうとう限界がきた。
彼は不意に歩幅を大きくし、歩くスピードも速める。
「──ユノ」
ちょうど彼らの横をすり抜ける瞬間にその名を呼んだのは、わざとだった。
騎士たちがギクリと身体を強ばらせたことに気づきながら、それでもまったく構うことなくユノへと近づく。
「ハル──ラノワール、殿」
ハルトを見つけた彼女は昔のように愛称で呼ぼうとしたところを言い直し、足を止めた。
どうしてわざわざ、ファミリーネームに訂正するのか。それすらも気に食わないハルトは、自分でも無意識に顔をしかめつつ口を開く。
「どこへ行く」
「えっ、医務室ですけど……何か怒ってますか?」
「別に怒ってない」
不思議そうに訊ね返してきたユノに、平坦な声で答える。
小首をかしげてじっとこちらをうかがう彼女を見下ろしているうち、なんだか胸のモヤモヤが小さくなってきた。
わけがわからないが、まあいい。とりあえずハルトは、ユノの手にある大きな籠を代わりに運んでやろうと手を伸ばしかける。
「あ。待って、ハルト」
とっさについ出てしまったのか、先ほどは訂正した愛称を口にしながらユノがずいっと顔を近づけてきた。
驚きつつも、反射的に身を引いて距離を取る。すると彼女は不満げに目を眇めた。
「ちょっと、避けないでくれる?」
そう言って、わざわざ地面に籠を置いてから再度ハルトの顔を覗き込むべく身体を寄せてくる。
なぜかはわからないけれど、自分の勘がなんとなくマズいと知らせていた。そんなわけでハルトは、ユノの視線から逃れるようにのらりくらりと顔を背けたり身体をひねっていたのだが──とうとう彼女が、強硬手段に出る。
それまで黙って騎士たちの後方を歩いていたハルトだったが、とうとう限界がきた。
彼は不意に歩幅を大きくし、歩くスピードも速める。
「──ユノ」
ちょうど彼らの横をすり抜ける瞬間にその名を呼んだのは、わざとだった。
騎士たちがギクリと身体を強ばらせたことに気づきながら、それでもまったく構うことなくユノへと近づく。
「ハル──ラノワール、殿」
ハルトを見つけた彼女は昔のように愛称で呼ぼうとしたところを言い直し、足を止めた。
どうしてわざわざ、ファミリーネームに訂正するのか。それすらも気に食わないハルトは、自分でも無意識に顔をしかめつつ口を開く。
「どこへ行く」
「えっ、医務室ですけど……何か怒ってますか?」
「別に怒ってない」
不思議そうに訊ね返してきたユノに、平坦な声で答える。
小首をかしげてじっとこちらをうかがう彼女を見下ろしているうち、なんだか胸のモヤモヤが小さくなってきた。
わけがわからないが、まあいい。とりあえずハルトは、ユノの手にある大きな籠を代わりに運んでやろうと手を伸ばしかける。
「あ。待って、ハルト」
とっさについ出てしまったのか、先ほどは訂正した愛称を口にしながらユノがずいっと顔を近づけてきた。
驚きつつも、反射的に身を引いて距離を取る。すると彼女は不満げに目を眇めた。
「ちょっと、避けないでくれる?」
そう言って、わざわざ地面に籠を置いてから再度ハルトの顔を覗き込むべく身体を寄せてくる。
なぜかはわからないけれど、自分の勘がなんとなくマズいと知らせていた。そんなわけでハルトは、ユノの視線から逃れるようにのらりくらりと顔を背けたり身体をひねっていたのだが──とうとう彼女が、強硬手段に出る。