転生夫婦の新婚事情 ～前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました～

「ハル、何かいいことでもあった？」


　自分に向けられた含み笑いのセリフに、春人は手もとのタブレットから顔を上げた。

　声の主はゆったりとチェアーに腰かけながら下腹あたりで両手を組み、面白いものでも見つけたように細めた目で自身の傍らに立つ春人を眺めている。

　地毛らしい明るめの茶髪に、精悍で整った男らしい顔立ちをした男の名前は、青山(あおやま)仁(じん)。
　春人の大学時代からの悪友で、当時ともに設立し今もなお成長を続ける【株式会社ユーアソシエイト】のトップである。


「……なんだ、突然」
「いや、何となくいつもより機嫌良さそうだから。おまえ、朝は特に表情筋が死んでるだろ」
「別に死んでない」


　声に覇気がなさすぎて、本気で抗議する気があるのか疑問だ。

　いつもながら淡白な春人の反論を聞いた仁は、脚を組み替えながらやはり楽しそうに笑った。

　【株式会社ユーアソシエイト】は、さまざまなアプリやソーシャルゲームの開発・運営の他、スマートデバイスに特化した広告代理事業やマーケティングコンサルティングを提供する企業だ。

　基本的に社員たちの服装は各自の判断に任せたオフィスカジュアルスタイルとなっているため、創業者のふたりもスーツ姿ではなくそれに準じた格好をしている。