お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
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その日の仕事が終わり、バッグと煎餅の入った紙袋を提げて会社を出る。バッグの中には文代から『ぜひ読んで』と言われた文庫本もしっかり入っている。
晴臣と煎餅を分けたいが、連絡していいものか迷いながら歩きだした。
夏江のために恋人のふりはするが、大した用事でもないのにメールや電話をしていい理由にはならない。晴臣は『なにかあったら連絡して』と言ってくれたが、それは夏江のところへ行く予定があるときや手術の日程が決まったときのつもりだろう。煎餅ごときで連絡されるとは思っていないに違いない。
スマートフォンを取り出してメッセージアプリを開いたものの、【この前はありがとうございました】と入力した後が続かず、指先が躊躇う。
「うーん、どうしよう」
好物を食べるなら、同じものを好きな人と一緒がいい。ダメならダメでもいいやと、思いきって【おいしい煎餅をいただいたんです】と入力したタイミングでスマートフォンが着信を知らせて小さな音を立てる。
「わっ」