Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 部屋に戻ってすぐ、専用のバスルームに直行した。
 バシャバシャと冷たい水で何度も顔を洗う。

〝エリカ〟
 芹澤さんの声が、頭のなかをぐるぐる巡る。

 ヤバいって……
 芹澤さん、魅力的すぎる。
 自覚しているのかな。
 自分がどれほど、女心を惑わす存在か。

 引き受けたことは、もう後悔していないけれど、また新たな問題が発覚してしまった。

 ルームシェアしている間、彼の魅力にずっと抗い続けなければならないということを。

 何よりも、これが一番難しいかも。

 でも、わたしみたいな、何のとりえもない人間が、彼みたいな超ハイスペックな男性に片思いなんてしたらそれこそ悲劇だ。

 まったく望みのない恋に身を投じることになるのだから。

 それに彼には、偽装工作までして見合いを断るほど、想いを寄せてる人がいるんだろうし……

 わたしの入る余地なんてないはずだ。
 「絶対、好きになってはダメ」 
 
 心に刻みつけるために、わたしは何度もその言葉を唱えた。
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