転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
「ポッピィちゃん、一緒にきてください」

いつもなら電話をかけたいのだと理解してくれて、大人しく抱かれてくれるのに、今日のスモフキンはエマの腕に噛みついた。

「なんで噛むんですか!」

痛くても離さずに誰もいない裏庭に走り出ると、スモフキンのお腹の毛を掻き分けた。

「由奈に電話をかけるんですからじっとしていてください。由奈は寝ているかな。こっちと向こうの時間の流れ方は違うから……えっ?」

驚いたのは、肌色の皮膚が見えたためだ。

「スマホは? スモフキンさん、スマホを出してください」

これまでスモフキンはエマとふたりきりの時だけ、人間の言葉を話していた。

けれども今は犬のような唸り声をあげ、威嚇してくる。

「ふ、ふざけないでください。一大事なんです。電話をかけさせてください!」

スモフキンを潰す勢いで両手で挟み、顔を近づけると、鼻を思いきり噛まれてしまった。

「痛っ!」

これにはたまらず手を放してしまう。

するとスモフキンはフワフワと逃げ出し、屋根の上まで飛んで行ってしまった。

「どうして……」

もしや、魔力切れということがあるのだろうか。

これではただの綿犬だ。

スモフキンはもう由奈と電話を繋げてはくれず、会話もしてくれないようだ。

エマは芝生に膝を落とし、両手をついた。

(どうしよう……処刑エンドを回避する方法をどうやって見つければいいのよ……)

これからストーリーがどう流れるのか。

読めない未来に恐怖するエマであった。



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