平凡な私の獣騎士団もふもふライフ2
とにかく、何かしらそばに置きたがるのである。どこへ行くと問われて「お手洗いです!」と告げた際には、顔から火が出そうなくらい恥ずかしかった。

「お前は、贈り物の中身よりも執事が気になるのか?」

なんだか不満そうな声がして、リズはジェドへ目を戻す。

「団長様に贈られたプレゼントなのに、どうして私が気にするんですか?」

貴族の高級思考な品物なんて分からない。それは伯爵である彼に贈られた何かであるのだろうし、気になるところなど一つもなかった。

「余るくらいいっぱいあるんだぞ。いらなければ欲しいだとか、そう思ったりはしないのか?」

「せっかくの頂き物なのに、人に譲ってしまってはもったいないですよ」

答えるリズの隣で、コーマックが声をこらえて笑っている。他の獣騎士たちも、苦笑交じりながら微笑ましげだ。

綺麗な装飾品に興味があるだとか、売れば価値があるだとか。まだアパートの部屋も借りられないでいる予算の足しになるだとか、そういったことをリズは全く考えていない。

ジェドは、頬杖をつき、しばしリズの大きな赤紫色(グレープガーネット)の目をじっと見つめる。

「そうか。お前はただ単に、執事の身を案じただけなのか」

そう呟いたかと思うと、ふっと口角を引き上げた。

「まぁ、それも悪くない」

「何が『悪くない』ですか、執事さんが大変ですよ。団長様のせいで、私のお仕事だって増えているんですからねっ」

リズは、ここ一週間の不満を口にした。おかげでごはん後の幼獣たちの寝顔を、ゆっくり眺めつつの仕事もすることができなくなっている。
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