今、君に想いを伝えて、ここで君を抱きしめる
 すぐに離れの部屋に布団を敷いて、安寿は航志朗の着替えを手伝った。安寿は羞恥心をまったく感じなかった。航志朗のシャツのボタンを外して脱がし、タオルで身体を拭いてからパジャマを着せた。そして、恵から手渡されたベビーサイズの冷却シートを航志朗の額に二枚貼って、イオン飲料を飲ませた。

 布団に横になった航志朗は安心したように言った。

 「安寿、……ありがとう」

 安寿は優しく微笑んだ。体温計のアラームが鳴った。安寿が航志朗の脇の下から体温計を取り出して見ると、三十八度二分あった。それを聞いた航志朗は苦笑いした。

 「昨年、安寿が熱出した時と同じ体温だな。熱出すのって久しぶりだ。……けっこうきついな」

 「航志朗さん。優仁さんが車で病院に連れて行くって、おっしゃっています」

 「今のところ大丈夫だと、優仁さんに伝えてくれないか」

 「はい、わかりました。航志朗さん、ゆっくり休んでくださいね。私、ずっとそばにいますから」

 微かに目を細めた航志朗はうなずいて目を閉じた。安寿はありのままに出てきた自分の言葉が胸に突き刺さった。

 (「ずっと」って、いつまで一緒にいられるかわからないのに……)

 安寿は航志朗のそばに座って見守っていた。航志朗はうつらうつらしては目を覚ました。夕食に希世子が卵が入ったお粥と二人分の温かい煮込みうどんをつくって部屋まで運んでくれた。少しずつ安寿がスプーンですくって航志朗に食べさせた。本当はまったく食欲がなかったのだが、航志朗は無理して口にした。安寿に食べさせてもらいたかったからだ。航志朗は自分自身にあきれかえった。

 (こんな状態で、まったく俺はどうかしているな。付きっきりで彼女に看病してもらって、嬉しくてたまらない)

 日付が変わって午前二時を過ぎた。少し前に眠り込んだ航志朗を安寿は毛布を肩に掛けて見守っていた。航志朗は息が荒くとても苦しそうだ。胸がえぐられるように痛くなる。航志朗の額には小さすぎる冷却シートを何回も取り替えた。航志朗の額に触れると、熱がさらに上がってきているような気がする。どうしても抑えきれない不安が安寿の心のなかに募ってくる。

 (このまま、航志朗さんが死んじゃったらどうしよう!)

 安寿は涙目になった。

 目をパジャマの袖でこすりながら安寿は思った。

 (そうなったら、私はもう生きていけない)

 その時、航志朗が小声で何か言った。

 「えっ?」

 安寿は顔を航志朗に近づけた。

 「……すまない、本当にすまなかった。俺が悪かった」

 英語だ。航志朗はひどくうなされて誰かに謝っている。苦しそうに航志朗は腕で目を激しくこすった。安寿はその腕を止めて航志朗の手を強く握った。その手はとても熱い。安寿は泣き出しそうになるのを必死になって抑えた。

 「大丈夫です。航志朗さんは悪くない。……大丈夫!」

 安寿は目を閉じている航志朗に一心に語りかけた。何回も航志朗は寝返りを打った。航志朗の息遣いは荒い。その姿をずっと見守っていた安寿は思い詰めた表情で毛布の中に入って航志朗を胸に抱きしめた。航志朗の身体はとても熱くて、安寿は苦しくてたまらなくなった。

 安寿はきつく航志朗を抱きしめた。そして、心の奥底から何ものかに祈った。

 (私が航志朗さんの熱を引き受けます。だから、彼の熱を下げてください!)



 


 


 
















 








 








 

































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