黙って一緒に堕ちてろよ

「っ、そ、それでも!仮にそれが本当だとしても、岩倉さんがなにもやってないって証明にはなんないじゃん!」


綾瀬さんが、苦し紛れにそんなことを言い出すものだから、思わず目をむいた。


案外しぶとい……というか図太いな。その話はさっきで終わったものだと認識していたんだけれども。


どうやら引き時がわからないらしい。化けの皮はがされてもまだやるか。せめて私たちも道連れにしようって寸法なのか。


ただじゃ堕ちない、か。まぁ立派な心がけだけど。私にしてみれば迷惑な話だ。


「えー、まだ言う?往生際悪くない?スパッと諦めたほうが身のためなんじゃないの」


「うるさい……!そうだ、証拠!ふたりが付き合ってるっていう証拠、ないでしょ。うそついてるかもしれないじゃない!」


「それ言う……?」


それ、この場ではそこまで重要じゃないのでは。なにがなんでも私たちを引きずり下ろす気か。


仮にそれを証明できなかったとしても、私は痛くもかゆくもないし、本性がバレた時点で私たちはすでに地の底まで堕ちている。
< 139 / 156 >

この作品をシェア

pagetop