ハッピーエンダー
驚いた私と、反応を待つ彼で、リビングには数秒の沈黙が走った。私には嵐のように感情が入り乱れ、渦を巻いている。こうしている今もセックスしたいと感じているのだろうか。大嫌いなんじゃなかったの。そして私とは、しないんじゃなかったっけ。なぜ変わったの?
「光莉?」
私の涙腺はバカになってしまった。泣きたいと思っているわけではないのに、エレベーターでのときと同じように、彼と話しているだけで涙が出てくる。
「ごめん。引いた?」
また、首を横には振れない。私は気づいてしまったのだ。
髪に触れてくる手を拒否はしなかったが、できれば今は抱いてほしくはなく、それは彼も感じ取ったのかすぐに手を引っ込め、自分の髪を触っていた。嫌じゃない。昔と同じく、水樹さんに応えることは簡単だ。でも。
「……ごめんなさい」
「な、泣くなよ。悪かったって」
悲しくてたまらなかった。だってそしたら私たちの関係って、郷田さんが水樹さんに置き換わっただけなんだもの。