ハッピーエンダー

彼を待つこの一ヶ月、いくつかのビジネスホテルを転々とした。派手にルームサービスやコインランドリーを使って生活しているため、もらった三百万円のうちもう二十万円を使ってしまった。ということは、あと一年くらいしか持たない。

私は久しぶりにテレビを点けた。あと一年で終わるドラマかアニメなら、見てみようかな。世の中のことにはまったく興味がなかったが、テレビを点けるとたまたまニュース番組がやっている。

『ーーお天気です。東京のスクランブル交差点の様子です。小雨が降っておりますが、傘をさしている人はまばらでーー』

スマホを持ったまま、ゆっくりと起きる。

『こんな日はおうちでゆっくり過ごしたいですね。夜には雨も止み、明日は洗濯物も干せそうですーー』

テレビの中のスクランブル交差点の、一点を集中して見つめる。今、水樹さんが映ったような気がした。見間違いじゃなければ、うつむいた女性を乗せた車椅子を押していた。真っ黒なスーツで、傘もささずに。それに茶髪だった。
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