ハッピーエンダー

それでも大学へ行かせてもらい下宿できるだけで幸せだと思っていたが、この狭く鬱蒼(うっそう)とした部屋に長くいると、気分が落ち、表情がなくなっていくのがわかった。この一年で、私の変化は顕著だった。

ほかの学生がキラキラして見えるたび、自分の生きている意味を考えるようになった。こんなことは母には話せない。帰省すると「大学は楽しい?」と笑顔で聞いてくる母を、お金以外で不安にさせるわけにはいかなかった。


この日も、私はアルバイトから帰るところだった。八時に終わるはずが常連客が帰らず、九時を回った。

私はこのところ毎日、白い半袖にショーパンを履いていた。そろそろ真夏になる。エアコンをつける季節は光熱費がかさむため、アルバイトを増やさなければならない。

アパートに到着し、バッグから鍵を出したところだった。駐輪場から「うっ」とえずくようなうめき声がし、足を止める。回り込んで様子を確認するのを躊躇したが、誰か苦しんでいるなら無視はできない。そう思い、忍び足で駐輪場を覗いた。
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