ハッピーエンダー
「それって誰なんですか」
水樹さんは答えない。
「水樹さん!!」
私の叫び声に彼の瞳は揺れ、フッと消えそうな笑みを浮かべる。そしてなにかをあきらめたように、ため息をついて口を開いた。
「……母親の客」
彼の答えを聞いた私は体の奥から凍りついた。
「えっ……」
カタカタと唇が震え、胸の痛みが堪えきれずにグッと手で押さえる。
言葉にできない拒否反応、信じられないほどの嫌悪感が全身を駆け巡り、平然と言ってのけた目の前の水樹さんを見た。いや、平気なわけがない。彼のこの闇に落ちた目を見ればわかる。私以上の拒否反応を示しながら、彼は私のためならその人と寝ると言ったのだ。
「水樹さん……」
「なに、さすがに引いたか?」
首を横には振れず、うつむいた。引いているんじゃない。
悲しいのだ。