溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情

吉池さんの甘い声が耳から脳、そして体全体に響く。

心臓がこれでもか、というくらい速く打ち付けているのを感じながら、ゆっくりと目を閉じると唇が触れ合った。

それはほんの数秒。

でも離れたと思ったすぐあとには2度目のキスをされて、さらには3度目、4度目と、離れては重なり、重なっては離れるを何度か繰り返す。 

そのうちにキスの濃度は高くなり、静かな部屋の中にリップ音が響き始めた。


「湊…さん」


思わず名前で呼ぶと、唇が離れ、目の前には驚いたような顔が。


「あ、ごめんなさ……っ」


私の言葉は湊さんの唇で塞がれてしまった。

強く唇を吸われ、離れた時に開いた唇の間から舌が入り込む。


「んっ……」


自分でも驚くような甘い声が出てしまった。

恥ずかしい。

それなのにキスを止められないのは湊さんのキスがもっと、と求めたくなるほど気持ちのいいものだったから。

欲望のまま手を湊さんの後頭部に回す。

でもその瞬間、キスが止まってしまった。

ハッとして目を開け、湊さんに謝る。


「ごめんなさい!私……」

「いや。これ以上は、キスで終わらせられる自信がないだけだ」


優しさの奥で揺れる熱っぽい湊さんの瞳を見て、鼓動が速くなる。


「今日は絵麻が名前を呼んでくれて、キスも出来た。あとは俺のことをちゃんと好きになってもらってからにしよう」


湊さんはそう言うと額にキスを落とし、私の頬をそっと撫でた。


「お風呂に入っておいで」


優しい声と大きな手。

その手が離れた時、無性に寂しさを覚えた。


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