溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
たしかに着物の一件で金銭感覚の違いが露呈した。

でもひとまず解消されていて、次に降りかかったスキンシップの問題もキスまで発展したし、翌朝には出掛ける時にキスをしてくれた。

だから兄の問いかけには首を横に振るのだけど当然納得はいっていない様子だ。 


「じゃあなんで、同棲三週間で戻って来たんだよ?吉池が絵麻を嫌うはずないのに…って、まさか絵麻の方がなにかしでかしたのか⁉」

「違う、違う」   


首を大きく横に振り、今、ここにいる理由を口にする。


「急に海外出張になったからだよ」

「出張?あぁ、なんだ、そういうことか」


兄は肩を落とし、そのまま私のベッドに腰かけた。


「でもさ、絵麻は英語が得意なんだからついて行けば良かったじゃないか。パスポートもあるんだし」


それに関しては湊さんも言ってくれた。

でも湊さんの仕事内容すら把握していない私が同行したところで何の役にも立たないのは目に見えている。


「邪魔したくないし、負担掛けたくないから」


そう答えると、兄は呆れたように眉根を寄せ、大きく首を横に振った。


「男ってのはさ、ホッとする時間が欲しいんだよ。それには恋人の存在が必要だったりする。仕事で疲れて帰って来たとき、好きな人の笑顔見ただけで疲れが吹っ飛ぶ。そういう感覚、絵麻には分からない?」

「ハル兄は?そういう人、欲しくないの?」


質問で返せば、兄は肩を竦めるだけに留めた。

未だに亡き妻を想っているらしい。


「そんなに想って貰えて、お義姉さんは幸せ者だね」

「吉池は違うのか?」

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