溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情

「そっか」


ゆっくりと目を開け、気が付いたことを口にする。


「結婚も好きってだけでいいんだ」

「ふたりの間に障害となることがあれば別だが、何もないんだからそれでいいと俺も思う。ただ、吉池の気持ちがいつまでも絵麻にあると思ったら大間違いだぞ。時すでに遅し、なんてことになっていないといいけど」


兄のおどけるような表情からは本心でないことは一目瞭然だ。

でも兄の言葉が私の気持ちを焦らせ、可愛げのない態度をしてしまったことが胸に不安を渦巻かせた。

と同時にこの不安と焦燥感に駆られる気持ちこそが答えだと気付き、机の上に置いていたスマートフォンを手に取ると兄は背中を押してくれる。


「そうだ。気持ちの赴くままに行動しろ。後悔しないために。手遅れになる前に」

「うん。ありがとう、ハル兄。私、湊さんに連絡してみる」


言い終えるや否や、連絡先を開き、メールを打った。

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