溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情

永井さんには見られていなくても状況は分かってしまったらしく、余計に恥ずかしくて顔を上げられずにいると湊さんがこの後の予定を永井さんに確認した。


「一時間半後に専門家との面談が一件ありますが、本日、会食の予定はありませんのでディナーを予約しておきましょうか?」

「どうする?」


湊さんに聞かれて首を横に振る。


「食べられそうにないので」

「分かった。だが終わるまでひとりにするのは心配だから俺と一緒に来るか?専門用語もわかるよな?」


湊さんのこの言葉に永井さんが反応した。  


「信楽さんのご職業って?」

「通訳です。英語と中国語だけですが」


そう答えると永井さんが湊さんに言った。


「それなら今日だけに限らず、これからも社長の元で」


そこまで言って永井さんは途中で口を噤んだ。

それはおそらく湊さんの表情からすでに断わられていることを察したからであって、些細な変化も見逃さないところに永井さんの優秀さを改めて感じさせられた。


「でもそれで正解なのかもしれませんね」

「なぜだ?」


湊さんの質問に、永井さんは顔を上げ、私に向かって答えてくれた。


「社内では社長の恋人が誰なのか、どんな人なのか憶測が飛び交っていますから。実際に信楽さんが出社してきたら注目の的になってしまいます。面白くない人からは陰口を叩かれるかもしれません」

「そんな話をしている時間があるならさっさと仕事を終わらせて帰ればいいのに、うちの社員は何をしているんだか」


湊さんの愚痴っぽい台詞に永井さんが首を横に振った。


「社長は全社員の憧れですから。好意を寄せている女性だって少なからずいます。社長がお弁当を持参した日は一気に噂が広まり、士気は下がり、早退する者までいたとか」


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