溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
「自意識過剰なんかじゃない。俺はきみが想像しているよりはるかにきみに惹かれているんだ。許されるならずっとこのまま抱き締めていたいくらいに」
吉池さんの声と言葉が鼓動を急速に速める。
そのせいで息苦しささえ覚えるのに、嬉しいという気持ちが勝り、吉池さんの背中に手を伸ばし、胸元に顔を埋めると吉池さんの体からは昔から知っている、懐かしい香りがした。
「この香り」
呟くと吉池さんが私の体を離した。
「うちで使っていた柔軟剤の香りがします」
「柔軟剤?そうか、同じなのか」
脈絡のない話に吉池さんは混乱しているようだ。
でも離れるにはちょうどいい。
吉池さんの胸元は不思議なくらい落ち着いて、しっくりくるもので離れがたささえ覚えてしまったから。
「ごめんなさい」
謝ってから吉池さんから離れる。
「朝ごはんにしましょう。冷めちゃいますから」
「そうだな。だがその前に箸だったよな」
そう言いながら吉池さんが箸を、私は焼きおにぎりをお皿に乗せ、テーブルへと運び、椅子に向かい合わせに腰掛けた。
「いただきます」
「いただきます」
互いに手を合わせ、それから箸を取る。
私はそのまま吉池さんの口へと私が作った料理が運ばれていく様を見ていた。
「どうですか?」