勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
本家を通して返事をすると、



すぐにお見合いの日はやってきた。




当日は着物を着る気にはならなくて、



シンプルなワンピースを着て約束の場所に向かった。




お父さんは、仕事を理由に同席しないことになり、



お母さんとふたりでお見合いの場に向かう。




3つ年上だというお見合い相手のひとは、



とても優しそうで穏やかそうなひとだった。




「西園寺、彩梅です」




視線を下げると、



ぽつりと涙がひとつぶ落ちた。




笑顔を作り、相手のひとの話に耳を傾けるけど、



なにをしていても思い出すのは九条さんのことばかり。




このひとと結婚するなんて、



とても想像できない。




結婚どころか一緒にご飯を食べたり、



手をつないだりすることすら、想像できない。




だって、このひとは九条さんじゃない。




誰でもいいはずがない。




ただ、九条さんに会いたい。




私は、九条さんの隣にいることを選びたい。




「ごめんなさい」




席の途中で立ち上がると、出口に向かった。




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