勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
お母さんは、一度私の名前を呼んだだけで、



追いかけてはこなかった。




そのまま建物の入り口を抜けて、



駅へと続く歩道を走る。




ヒールは高いし、



ワンピースの裾が足にまとわりついて走りにくいけれど、




それでも九条さんに会いたくて。




そのとき……




「彩梅!」




その声に、ぴたりと足を止める。




この声は……




「……く、じょうさん?」




横断歩道の向こうに、九条さんの姿があった。



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