勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
事情を知ったおじいちゃんたちの喜びようは相当なもので、



すぐに両家顔合わせの食事会が決まった。




月明かりに白く照らされた梅の木の下で、



九条さんと向かい合う。




「でも、食事会ってなにをするんだろう?」




「要は、じーさん達の酒盛りだろ?」




「……行きたくないな」




酔っぱらったおじいちゃん達と一緒に食事するなんて、



気が重すぎる。




また勝手なことを言い出したらどうしよう。




「まあ、じじい達の昔からの悲願だったらしいから。



それに会食ひとつで、誰からも口出しされずに、



堂々と彩梅とつきあっていけるのなら、



なんだってするよ」




「九条さん、前向きですね?」




「あのさ、二十歳過ぎた男が好きな女と半年過ごして、



手つなぐだけで我慢しろとか、拷問に等しいからな。



彩梅はもう少し、俺の理性と忍耐力に感謝した方がいい」




感謝の言葉のかわりに九条さんのシャツにしがみつき、



勇気をだして、



そっと九条さんに唇を合わせた。




くっ、心臓が飛び出しそう……




「び、っくりした……」




九条さんは、目を見開いて驚いている。




こ、これは恥ずかしいっ!




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