歪ーいびつー(どんでん返し系 狂愛ミステリー)
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「ーーねぇ、涼。ちょっと、大事な話があるんだけど……。外で、話しいいかな?」


 カレー作りも無事に終わり、自分達のテントへと戻って来たところで、俺は涼に向けてそう、話を切り出した。


「……楓。どうしたの?」


 テントを出ると、涼はすぐにその口を開いた。


「夢ちゃんの事なんだけど……」

「……夢が、どうかしたの?」


 歩きながらそう話し出せば、俺に付いて隣りを歩き始めた涼。


「うん……。夢ちゃん、危ないかも」

「危ないって、何が?」

「優雨ちゃんがだよ」

「優雨が……? どういう事?」


 涼は怪訝そうな顔をしながらも、隣りにいる俺を見つめる。


「優雨ちゃんは、夢ちゃんのことが好きなんだよ」

「まぁ……。友達だから、そうだろうね」

「違うよ。女として、好きなんだよ。ラブって事」

「えっ……? だって……、優雨は女……」


 俺の言葉に驚きをみせる涼は、信じ難いといった様子で俺を見つめる。


「ーーあっ! ちょうど、優雨ちゃんが来たよ! ……ほら、見に行ってみようよ」


 涼の腕を掴んで引っ張ると、テントへと戻って行く優雨ちゃんの背中を追う。
 
 優雨ちゃんがテントの中へと入って行ったのを確認すると、コッソリと入り口を捲って中の様子を伺う。

 すると、そこにはーー
 眠っている夢ちゃんを愛おしそうに見つめながら、夢ちゃんの脚に触れている優雨ちゃんが居た。
 触られている夢ちゃんのワンピースは太腿(ふともも)部分まで捲れ上り、その脚の大部分が露わになっている。

 ーー俺は、その姿に酷く興奮を覚えた。

 隣にいる涼の様子をチラリと見てみると、驚きに絶句して固まっている。


「……あれ、何やってるんだろね?」


 暫く中の様子を黙って覗いていた俺は、隣で固まったまま動かない涼に、そう、声を掛けてみる。
 その声に、ピクリと肩を揺らして反応を見せた涼。


「楓……。今見た事は、誰にも言わないで」


 それだけ告げると、涼はテントの中へと入って行く。
 そんな涼の行動に慌てて、急いでテントの陰に身を隠した、その時ーー

 勢いよく、テント中から飛び出して来た優雨ちゃん。
 俺の存在に気付かないまま、そのまま全速力で走り去ってゆく。

 そんな優雨ちゃんの背中を静かに眺めながらーー


 膝を抱えて頬杖をつくと、俺はニッコリと微笑んだのだった。





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※※※





 テントでの事があってから、優雨ちゃんと夢ちゃんの様子を時折、心配そうな瞳で見つめている涼。
 そんな事情も知らずに、さっきまで無邪気に川で遊んでいた夢ちゃん。

 俺は夢ちゃんの可愛い笑顔を思い出すと、目の前にいる優雨ちゃんに向かって貝殻を差し出したーー


「ーーはい、これ。優雨ちゃんにあげる」

「えっ……、私? ……夢にじゃなくて?」


 驚く優雨ちゃんは、そう告げながら俺のことをジッと見つめる。


「……うん。優雨ちゃんにあげるよ」


 優雨ちゃんを見つめて小首を傾げると、俺はニッコリと笑ってそう答えた。


「……何で?」

「うん……。実を言うとね、本当は夢ちゃんにあげるつもりだったんだ」

「じゃあ、夢にあげたら?」

「もう、涼に貰ったみたいなんだよね……」

「……そう」


 俺の発した言葉に、複雑な表情を見せる優雨ちゃん。


「あの2人は、両思いらしいしね……」

「え……っ?」


 ポツリと小さく呟くと、驚いた顔をして俺を見つめる優雨ちゃん。


「そんな、事……誰が言ってたの?」

「うーん……。誰にも秘密だよ? さっきね、聞いちゃったんだ。涼が、夢ちゃんに告白するとこ。……で、涼が言ってた。両思いだねって」

「…………」

 
 優雨ちゃんの様子をチラリと見てみると、表情こそ普段通りに見えるが……。その手は、小さく震えている。


「……あの2人は、両思いなんだね」


 俺はハッキリとした声でそう伝えると、優雨ちゃんに向けてニッコリと微笑んだ。





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