時には風になって、花になって。
この娘と出会ったのは偶然か、それとも必然か。
それは紅覇ですら分からなかった。
「…泣いてなどおらん。これは雪だ」
(くれ───…)
紅覇はサヤを腕の中へと閉じ込めた。
吐いた息は白い。
「…冷えただけだ」
暖を取っているだけ。
お前が寒そうだったから。
そんな御託を並べる紅覇に、サヤは腕の中で笑った。
そして背中に同じようにして回る。
「腹は空いているか」
コクコクと返事が返ってくる。
私はこの娘に本当は何を伝えたいのだろう。
言葉では言えなかったから男は行動にしたのだ。
どうすれば良いか分からなかったから抱き締めた。
いいや、本当は。
…ただ、抱き締めたかった。
「温かいな…お前は」
世は残酷だ。
命は季節と同じ。
この目にいつだって焼き付けておらねば、いつ無くなるか分からない。
幾千の中生きているはずなのに、そんなものに怯えている己は。
まだ数えられる程しか生きていない中でも笑っている少女よりも。
きっと、ずっとずっと弱い。