BATEL
第6章 光と闇
レビィは恐る恐る魔法陣に入った。
試験官の代わりにフェルト王妻がすることになりガラス玉を手に触れ結果を待った。
ガラス玉の中の水がゴポゴポと鳴り青色から黄色になり輝き出した。

「おいおい、まさか!!」

「勇者の誕生か!!」

ザワザワと騒ぎ立てる衛兵達。

フェルト王妻
「あなた。人間族で光の属性を持っているわ。」

バミリオ王
「ほお。なんと...50年ぶりぐらいになるかの。」

フェルト王妻
「光は闇を照らしこの世に安定と平和をもたらし悪が蔓延る時代に終止符を打つ存在。光属性は必ず人間族に宿るの。」

レビィ
「え、俺が?!だって...ずっと父の研究の手伝いばかりで剣なんか持ったことも....」

バミリオ王
「レビィよ。そなたの運命なのじゃ。」

レビィは少し困惑した様子でドアの方に行こうとした。

衛兵
「申し訳ありません、勇者様。妹様が終わるまでお待ちいただけますか。」

レビィ
「勇者.....?!」

レビィはクロエの方を見た。

レビィ
「ほら。次お前の番だろ?」

フェルト王妻
「クロエ=ナーヴァ」

クロエは咄嗟に隣にいた王の手を握った。それを笑顔でしゃがみこう言った。

バミリオ王
「何も心配ない。何があってもわしが隣におる。」

王はまるで我が子のように見守った。
クロエは手を離し魔法陣の中に入った。


ゴポゴポゴポゴポゴポゴポ....
勢いよくガラス玉の中の水が沸騰した。
そして亀裂が入りどす黒く血のような赤に変化した後、真っ暗になり影のような中から闇のような紫色に変化した。
衛兵達がまたもや騒めきフェルト王妻が震え出した。

フェルト王妻
「何よ、これ。こんなこと...ありえない。」

バミリオ王
「これは...まさか...」


フェルト王妻が少し落ち着きを取り戻しゆっくりと口を開いた。

フェルト王妻
「まずゆっくり話すわね。あなたの父は人間族だけど母は人間族じゃないのは知ってる?」

レビィ クロエ
「え?」

フェルト王妻
「知らないみたいね。あなた達の母はダンピール族という人間と吸血鬼の混血。母はこのメルーン王国管轄の元保護された。保護された時は記憶が無くなっていたそうよ。生前はよく知らないわ。」

バミリオ王
「セリアは体調が良くないじゃろう?ダンピール族は吸血鬼と同じ血を糧として生きる種族でな。セリアは長年血をとってないからのぉ。禁断症状が出とるのじゃ。」

フェルト王妻
「そしてあなたクロエ=ナーヴァ....あなたはティーフリング族.....」

フェルト王妻
「ティーフリング族は別名ナイトメア族とも呼ばれ遥か昔からの言い伝えではティーフリング族が現れる時、この世に災いをもたらしこの地を全て破壊する王が誕生する。と言われている悪魔族なの。」

レビィ
「でも父と母はそんな種族じゃ...」

フェルト王妻
「そう。そこが問題なの。出生は様々で、まれに魂が穢れた状態で生まれたもの。悪魔の血を引くとも聞いたことがある。そしてクロエの属性は闇。光と同じく希少ね。ただ...」

レビィ
「ただ.....?!」

フェルト王妻は固唾を飲んだ。

フェルト王妻
「ただ闇属性はここ200年は現れていないのよ。かつて闇属性が誕生すると必ずこの地を破壊し滅亡へと変えそのたびに光属性の勇者率いる軍隊が戦い勝ち、この世は今でも平和なの。闇属性は悪魔の血を引く者の象徴ということ。」

クロエは立ち尽くしたが王の元に行き、笑顔でこう言った。

クロエ
「ねぇ、王様。さっきの飴まだある?」

王、王妻、使徒、衛兵数人はこのクロエの行動に心から笑った。

レビィ
「おい、クロエ!この状況分かってるのか?」

クロエ
「分かってるよ。レビィ、でも種族とか関係ないよ。どんな悪魔でもパパとママの子供だよね?この地を破壊とか私痛いの嫌いだからママのお手伝いするからレビィは勇者だっけ?がんばってこの世を平和にしてね」

クロエはママの癖が移ったのか困ったようにクスクス笑った。
レビィはため息をついた。


バミリオ王
「この性格だと大丈夫そうじゃの。クロエよ。この国にいつでも遊びに来るんじゃよ。わしと遊ぼうの。」

クロエ
「うん!」

バミリオ王
「そしてレビィ、そなたはいい聖騎士になれるであろう。わしの下でこの国を安定と平和をもたらしてくれんかの。そしてここにいるそなたの妹クロエを頼んだぞ。」

レビィ
「かしこまりました。」

バミリオ王
「そしてここにいる我が兵達よ。このクロエの事は口外してはならぬ。口外した者には厳しい処罰を下す。そして明らかな種族差別も絶対に許さぬ。同じく厳しい処罰を下すとする。」

兵達は差別どころか棒付き飴を舐める姿のクロエを見て和みお菓子を持てないくらい分け与えていた。それを見たバミリオ王は笑顔で

バミリオ王
「問題ないようじゃの。レビィよ。この事は父と母にはわしから伝える。じゃから安心せえの。闇は光をも覆い尽くすと言ったが光は闇を助けることもできるのじゃよ。お前さん達の成長が楽しみじゃのぉ。」

バミリオ王は髭を撫でフェルト王妻とドアから姿を消した。


王室に着いた王は椅子に座った。

バミリオ王
「ふぅ〜。これから忙しくなりそうじゃの。」

クエル
「王。少しよろしいですか?」

バミリオ王の秘書であるハーフエルフ族のキリッとした顔出しの中年の男性がこう伝えた。

クエル
「200年ぶりに闇属性がこの地で現れ世界を滅ぼす力を持っていると考えておりますのは私だけではございません。このまま放っておくのですか?」

バミリオ王はクエルを睨んだ。

バミリオ王
「クエルよ。悪魔族でもあろうとも産まれてきた事が何より大事な事なんじゃ。あの子の様子を見るとしよう。そしてクエル。そなたにしてもらいたい仕事があっての。」

クエル
「は。なんなりと。」

バミリオ王
「キール村に警備という名目で監視をする様に衛兵に伝えてもらえんか。」

クエル
「かしこまりました。ただちに。」

クエルは即座に退室した。
隣に座っていたフェルト王妻はバミリオ王が何か企んでるのを見逃さなかった。

フェルト王妻
「あなた。もしかしてあの子我が子の様に可愛がるおつもり?」

バミリオ王
「なんのことじゃ!お主もそう考えておるではないか!」

フェルト王妻も図星だったことを隠さず顔を隠し

フェルト王妻
「だってあの子の夕陽の様に燃える赤い目、綺麗で落ち着きのある赤い髪、そして雪の様な白い肌。絶対あの子この世で一番美しいお女王になるのよ!」

バミリオ王
「なぬ、姫じゃと?!」

バミリオ王は頭を抱えた。
バミリオ王とフェルト王妻の間には子が出来ないと伝えられて長年継がせる者がいなかった。

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