Ritratto〜変わってしまった君へ〜
私はルカの絵に触れ、また涙をこぼす。あの時、君が最後に言った言葉を本当は聞いていた。聞こえないフリをしていただけ。

『好きだったよ、幸せになってね』

君は最期まで優しい人だった。この肖像画を描くことが何の償いになるのかなんてわからない。でも、何故かいつも描き続けてしまう。

もしも、私が周りの言葉を無視して彼に優しくしていたら、彼と掴んでいた幸せもあったのかしら……。

もういない人の肖像画が並べられたこの場所は、不思議と温かい。それはきっと彼が優しい人だからだろう。

こんな汚い色の私を好きになってくれた人だから……。






< 8 / 9 >

この作品をシェア

pagetop