メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
玲央からすぐに写真が送られてきた。花や木の実などがモチーフの、まるで彼女の為に作られたようなナチュラルでふんわりとしたアクセサリーばかりだ。

『イベントで会った玲央の新作。こういうの好きか?』と杏花に送ってみたら『素敵。すごく好み。』とすぐに返信があったので、躊躇(ためら)いつつ玲央からの打診を伝える。最初からモデルの件を伝えなかったのは最後の悪あがきだった。

今度は返信までに時間がある。モデルはやりたくないと思っているが、なんとかオブラートに包んで断ろうと文章を組み立てているのでは、などと都合のよい方に期待している自分を殴りたくなる。

『モデルなんてやったことないけど、暖人の友達だし、せっかく言ってくれたんだからやってみようかな。』

その返信に胸が締め付けられるようだった。

気が重いまま玲央に電話で杏花が了承した旨と彼女の連絡先を伝えると、奴はアラサーのくせにガキみたいに『やったぁ!』と喜んだ。強引だし空気読めないし、でも憎めないやつなんだよな。別に友達じゃねえけど。才能は俺なんかとは比べ物にならないし、現実離れしたイケメンだし。そう思っていると玲央はいきなり色づいた声になった。

『にしてもさ、ああいう子ってベッドではどんな感じなんだろうな。めっちゃ気になる~!見てみたいなぁ。ああ見えて意外にすごかったりして・・・想像するだけでたまらないね。」

「お前・・・!!」

『ハルの彼女じゃないんなら、むしろ俺が大人にしてやる、みたいな・・・。そういうのって男冥利に尽きるよね。』

舌なめずりするような口調に猛烈な怒りを覚え携帯をへし折りそうなくらい手に力が入る。

「ふざけんな!!んなこと絶対させねーからな!!」

『うわあぁ、声でかいよ~。ハルってそんな声出るんだね。てか何マジになってんの。冗談に決まってんじゃん。超ウケるんですけど~。』

くっくっと笑う声が悪魔の笑い声のように聞こえた。こんなにも誰かに嫌悪感を覚えたのは初めてのことだった。


数日後の早朝、この時の
玲央の言葉が冗談に思えなくなる写真が俺の携帯画面に表示されていた。
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