メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「・・・そう言えば、うちの娘の話なんですが。」

エレベーターを待ちながら彩木さんが口を開き、ドキンとする。

「去年の11月くらいから少し様子がおかしいなと思っていたのですが、年明けから更に変わった行動をとるようになったんです。」

「変わった行動、ですか?」

「ええ。自分の部屋の時計をどこかに片付けてしまって。リビングでも時計を見ないで、携帯で時間を確認しているんです。かと思えば、よくつけていた雪うさぎの腕時計をじっと眺めていたりとか・・・私、あの腕時計、どこかで見た気がするんです。どこだったかしら?」

「!?!?」

じっとこちらを見上げてくる彼女の目は、やはりあいつとそっくりだった。

「ちなみに今彼女にはお付き合いしている方はいないみたいです。妹みたいに可愛がってくださる方はいらっしゃるみたいですが。直接聞いたわけではないので私の思い違いということもあるかもしれませんけど。」

「!!!」

その時エレベーターの到着音がした。

「あの子の為にそんなにも悩んでくださってありがとうございます。私は暖人さんなら大切な人を幸せに出来ると信じています。」

エレベーターに乗り込む俺に彩木さんはそんな言葉をかけてくれた。乗り込んでから彼女を見ると春風のように温かく微笑んでくれていた。
< 225 / 290 >

この作品をシェア

pagetop