メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
図書館の屋上はいつもより賑わっていた。ここから目の前にある校舎の壁に取り付けられた(おもむき)ある時計が入るように写真を撮ると映える写真が撮れるということで皆撮影をしていた。私も先程ここで友達と一緒に写真におさまったばかりだ。

「覚えてるか?前にお前がここで『思い出は時間が経つほど輝く。』って言ったこと。」

暖人は時計を眺めながら懐かしむように遠い目をして言った。

「うん。覚えてるよ。」

ここでオレンジ色の夕日を浴びながら手を繋いで時計を見た。半年ほど前のことなのに、ずいぶん昔の出来事のようにセピアがかって頭の中に浮かんでくる。あの頃はまだ自分が暖人に恋をしていることに気づいていなかった。

「その考え方はすごくいいと思う。さすがお前だよ。でもな、俺はお前とのことを思い出には・・・過去にはしたくない。」

「暖人?」

「過去だけじゃなく今も未来も俺の隣にいてほしい・・・好きなんだ。」

時の流れが止まってしまったのだろうか───周りを見回すと写真を撮る学生達は変わらずに楽しげにカメラに向かってポーズをとっている。

「誰に対しても感じたことのない熱い気持ちをお前に対して感じてる。それでその気持ちは全ての想いを超えてる。初詣の時は『自分の全てを時計にかけて、時計のことだけを考えて生きていく。』なんて言ったけど・・・お前といられるのなら夢が叶わなくたって・・・将来店なんて開けなくてもいいっていうのが俺の本音だ。」

暖人の瞳が放つ熱っぽい視線に捕らえられて、心臓がうるさいくらいに自分の存在を主張する。
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