メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「全く急に抱きついてきやがって・・・不意打ちとは卑怯だな。さて、どうしてやろうかな。」

「!!」

一気にそわそわが全身を駆け抜ける。さっき暖人にじっくり触れられて、まるで薄皮を剥かれたゆで玉子のように新しい私が現れた。その私はすごく敏感で、彼の言葉だけで全身が反応してしまう。

「杏花、好きだ。」

暖人は私の両手を床に押し付けると耳に唇を寄せて切なげにささやく。それだけでもうどうにかなってしまいそうだ。

「ていうか、結構見えてるけど・・・。」

彼は私に貸してくれたトレーナーの胸元に視線を注ぐと数本の指で触れてきた。途端に触れられたところが熱くなって溶けていくようて、ドキドキして恥ずかしくて嬉しい。

ふいに手が離れて寂しい気持ちになったのが伝わってしまったのか、唇を指でそっと撫でられた。その指は首や胸元につけられた赤い焼印みたいな痕に移動する。

「これからは消える前に新しいのつけるから。」

「・・・うん。」

嬉しくてとろけそうになる。この印があったらどんな辛いことも吹き飛ばすことが出来そうだ。

「アホ。これくらいでそんな顔になるな。」

「どんな顔になってるの?」

「すげーそそる顔。」

「どんな顔だろ?ちょっと鏡で・・・。」

「見なくていい。飯の前にもう一回・・・。」

「え!?ま、まさかまた・・・。」

先程の彼と自分の姿を思い出すとドキドキし過ぎて弾けてしまいそうだ。

「・・・お前、俺がどれだけ我慢したかわかってるか?ホテルでも玲央のアトリエでもこの部屋でも・・・特にハロウィンの日はマジでやばかった。さっきのだけで足りると思うか?」

じりじりと近づいてくる彼の唇が発する熱を私の唇が察知し警告音を鳴らす。
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