メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
揚げまんじゅうを食べ終わり浅草寺に入る。境内で熱心に手を合わせる杏花は何を祈っているのだろう。

彼女がこれから社会に出て仕事や職場の人間関係に悩んだ時、会社勤めをした期間が短い俺にアドバイス出来ることはあまりないかもしれない。それでも彼女を抱きしめて気持ちを受けとめて甘やかすことは出来る。嫌なことがあった時に気持ちをぶつける相手にはなれるのだ。

彼女の隣にいる男として、今の俺には足りないところがたくさんある。でもそれはこれから努力して毎日少しずつでも成長していけばいいし、俺だから出来ることもたくさん見つけていきたい。

俺の願いは初詣の時と少し変わった。あの時は杏花の幸せと家族の健康を祈ったけれど、今度は二人でずっと幸せにいられますように、それから家族の健康と・・・ついでに友達(ヽヽ)の健康も祈ってやった。

彼女と過ごす今日が明日に繋がり明日が明後日に繋がり、未来に繋がっていく。止まることのない時の流れの中、隣で時間を刻んでいけるのだ。彼女の針が進む音と俺の針が進む音が重なって奏でるハーモニーはとても心地良くて、これからもずっと聞いていたいと思うけれど・・・。

───『隣で』時間を刻む、それだけでいいのか?俺は本当はもっと・・・。

杏花が目を開けて俺を見上げ嬉しそうに微笑んだ。そんな彼女の心も体もそして未来も全てが欲しくなってしまう。出来ることなら全て自分のものにして守りたいと思う。今はまだこの気持ちを彼女に伝えることは出来ないけれどいつかきっと───。

俺は決意を確かなものにするかのようにぐっと両手を握りしめた。
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