メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
暖人が立ち上がって言いかけるとお父さんは目頭を押さえた。

「お父さん！？」

「・・・い、いや、お父さんも花粉症で・・・。」

「え？お父さんは花粉症じゃないよね？」

「こ、今年からなっちゃったのかもね！目薬持ってるからさしに行こう。」

お母さんが焦った様子でそう言って二人は後ろを向いて歩き出した、と思ったら途中で立ち止まり、お父さんが振り返らずに言った。

「暖人さん、杏花はもう既にあなたと一緒に人生を歩んでいます。だから我々に許可をとる必要はないんですよ。」

「杏花を幸せにしてくれてありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします。」

そう言って振り向いたお母さんは目に花粉のせいだけではないと思われる涙を溜めていて、深く頭を下げてお父さんと共に歩き出した。お父さんの肩が震えているように見えたのは気のせいだろうか。

「杏花さん、暖人をよろしくね。顔怖いし不器用過ぎるけど、優しくてまっすぐなやつだから。」

暖人のお母さんはそう言うと、先を歩く二人の後ろを楽しげに歩いていった。
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