メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「はる・・・苦し・・・。」

「売り上げ───金───はどうでもいいんだ。俺、人相悪いし人とうまく話せないからか、店出してもあんまり人来ないんだよ。だからネットの売り上げが中心だったけど・・・ネットでは俺の作品の良さ、全然伝わりきらねーんだ。載せられる写真の枚数も限られてるし。実際触って細かいところまで見てほしくて、もっと言うと作品の放つ力を感じてほしくて、売れなくてもいいからこういうイベントとか公園のマーケットに出店しててさ。」

「うん。」

絞り出すような声で語られるその言葉は私の胸の中に舞い降りた。彼が今私にしてくれているように、その言葉をぎゅっと抱きしめる。

「お前の店作りのお陰だよ。すごく見やすいようにしてくれて、俺たちも目立たなく店にいられるようにしてくれて。『写真・動画撮影及びSNS投稿大歓迎!!』って貼り紙もしてくれたろ?皆気軽に俺達のブースに来て作品触ったり撮影したりしてて。あんなにたくさんの人達が俺の時計見て驚いたり嬉しそうにしたり、作品に見入ってる風景、想像したことなかった。それで買ってくれた人に直接商品渡して、ああ、この人の近くで俺の時計は時を刻んでいくんだって、俺すごく感動して嬉しくて・・・。」

暖人は興奮した様子で一気にそこまで言うと、何かが込み上げてきたかのように口をつぐんだ。彼の言葉を伝え終わった空気が余韻で柔らかく振動しているように感じた。私は無意識のうちに彼の背中にそっと手を回していた。
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