あざといきみの誘惑は
ヒヤリ、背筋が凍る。
信じてもらえなかった?信用出来ない奴だと思われた?
今からボコボコにされて、ここを追い出される?
……いや。いやだ。
それだけは、絶対に────、
「あのさ。ひとつ、頼まれてくれない?」
「……え?」
唐突な頼み事に、間抜けな声が出た。
た、たのみごと?え、ここでいきなり??
スパイの私に頼み事、って、何?!?!
頭上にハテナを乱舞させながら、青羽の顔を見上げる。
その表情は、さっきと変わらず無表情。
「それを受けるか否かによって、ライの処分を決める」
……それはつまり、私には選択権がないと言っているようなもの。
たぶん、拒否れば私は容赦なくコイツらに絞められるだろう。
それは、今まで関わってきた二週間そこらで理解している。
青羽は私の目を見つめながら、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「ライ、きみ─────二重スパイ、してくれない?」