あざといきみの誘惑は
髪の毛は夜を纏っているような濃い藍色なのに、瞳はその藍を限界まで薄めたような、淡い色。
この瞳の前では、私が吐くすべての嘘が見抜かれそうで、毎回ヒヤヒヤしてたっけ。
「……そこのソファ座って」
抑揚のない声で指示をされて、ハッとする。
こんなところでボーッとしてる暇はない。
いまは、ここをどう逃げ延びるかが最重要案件。
タキオンが集う場所は、賑わいがある繁華街を抜けた先にある、もう誰も寄り付かない無秩序な場所に建てられたビルの地下一階。
通称・裏街区と呼ばれる場所にある。
どうやらここはどこかの組の管轄に入るようで、そのせいでほとんど人が寄り付かないんだとか。
実際、ここのビルにはなんの会社も入っていない。
おかげで、このあたりは無法地帯になっているらしい。
まあ、ちょっと歩けばすぐに奥にあるネオン街に入るんだけどね。