きみは微糖の毒を吐く



「へえ、美味そう」



私といる時はめったに笑わない絢斗くんが、微笑んでいる。


紗英さんから差し入れのお菓子を受け取っている。

それだけで胸が痛いなんて、心の狭い女だなぁ。




「絢斗くんって紗英ちゃんとも仲いいんだ……!芸能人って感じ!」




悠里ちゃんが興奮しながら話しているのを、へらりと笑って誤魔化して。



そういえば「紗英」って、絢斗くんに『電話していい?』ってメッセージを送ってた人だっけ。


この前の出来事を急に思い出してしまって、不安になる。


……ああ、思い出さなければよかった。


あの後電話をしたのかはわからない、けど。

きっと紗英さんは好意を抱いているんだろうってことは、分かってしまった。





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