ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
「何があったのか、詳しく知ってる訳ではないんだけどね。休みの期間が明けてから、北斗は清々しい表情するようになったし、笑顔も見せてくれるようになったんだ。」

楓摩が聞かせてくれた話は、おおよそ今の北斗先生からは想像も出来ないような意外な話だった。

「へえ、そうだったんだね。優しそうな先生からは想像できないけど……。北斗先生も悩んでたからこそ、の選択なのかもね。」

「うん。きっと、あの経験があってこその今の北斗が居るんだろうし、俺もそういうことを乗り越えて努力し続けた北斗を尊敬してるし信頼してるんだ。」

楓摩が北斗先生のことを頼りにしている理由はそれだったんだな。

身近で見ていたからこそ、北斗先生の真面目さとか努力家なこともきっと知っていたんだろう。

















「っくしゅん!!」

「どうした、北斗。風邪か?」

マグカップ片手に兄貴がそう尋ねる。

「いや、別にそんなことないはずだけど……」

熱もないし、倦怠感も他の症状も特にない。

変だな、と思いつつ鼻をかんだ。

「誰かに噂されてたりしてな。」

ニヤッと笑って兄貴はそう言うけど、兄貴と違って、噂されることなんて滅多にない…はず。

「ええ、兄貴じゃあるまいし。」

「案外あったりして。」

「そうかな……」

噂、か……

だとしたら、何言われてるんだろう。

昔のこと…だったら、少し恥ずかしいな。





……でも

何故か、案外悪い気はしなかった。



【研修医】おしまい
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