【短】綺麗なアイじゃないから…。
なんで、好きになっちゃったんだろう?
彼の何もかもを…。
どうして、別れを告げても尚、胸が苦しいんだろう?
私は訳が分からないまま、暫くその場にいて、自分の気持ち一つ一つに折り合いをつけていった。

彼を好きな気持ちは、変わらない。
きっと…彼もそれは変わらないんだろう。

だけど、気持ちのベクトルがお互いに違い過ぎて…今はもう駄目だと心が叫んでる。

彼のくれる言葉が胸に幾つも積もっていく。
手紙から溢れてくる想い。
口唇から零れる甘く優しい言葉の数々。

「追い掛けても、来ないんだね…」

私は、溜息を吐く。
それは冬の風に吹かれ、音もなく消えていった。

「愛してる、なんて…手紙の中だけじゃ足らないよ…伝わらないよ…」

嬉しくて鞄に入れっぱなしだった、彼からの手紙を手に取って、私はもう一度溜息を吐いた。

「一方的だなんて言わないで?このままでは二人壊れてしまうから…」

呟いて、頬に伝った一筋の涙。
私は、くしゃくしゃと手の平で丸めて、立ち上がる。

明日から、彼の隣を歩くことは出来ないけれど。
彼の声を愛しいと思うことは出来ないけれど…。
泣いて、泣いて、この心をどうにか浄化したいと思った…。

沢山、心の中で数え切れないくらい、詰ってしまってごめんね…?

それでも、私が好きだったことだけは本当でした。

さようなら、ありがとう。
零れ落ちた涙を何度も拭って、彼の面影を胸に抱いた。

愛してる…その言葉に、応えられる程の心のキャパはなかった私をどうか許して…。

いつか、貴方の思いが、私の胸に形をもって残るくらい…どうか自分勝手な私を、許して下さい…。

Fin.
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