1日だけの恋~10月25日夜完結~
チン……
ラウンジの階で扉が開いた。
エレベーター前に人はいない。
従って乗ってくる客もいなかった。
「どうする?」
≪開≫のボタンを押して私の返事を待つ綿貫さん。
「私は」
扉が閉まった。
私が綿貫さんの手を引っ張ったから。
「綿貫さんが好きです」
「それだ。
俺が聞きたかった言葉」
綿貫さんに包み込むように抱き締められた。
「遊びでも構いません。
綿貫さんがフリーなら私、やっぱり諦められないですから」
「遊び?
どうして俺を遊び人だと思うんだよ。
世間に振り回されすぎ。
言っとくけど、俺は遊びで女は抱かない。
今までも付き合った女しか抱いたことない」
言いきる綿貫さんが潔くて好き。
「そうなんですか?
遊び人って噂信じてました」
「全く。
マリアが言ったろ。
恋人にしてくださいって。
今朝、一年前から俺に憧れてて好きだったと聞いてさ、心を持ってかれてたんだ。
久々だった。
あんな純粋な告白されたの」
綿貫さんの腕の中にいる。
この現実が嘘みたいだ。目の前にいる綿貫さんが夢じゃないといいんだけど。
そんな気持ちで綿貫さんを見つめた。
「それに、
マリアみたいな子に下着姿みせられて
抱いてくれっていわれたら
完全に理性が飛ぶ。
あそこから俺は本気になってた」
「綿貫さん……」
思い出すと恥ずかしくて全身が熱くなる。
私の髪を優しく撫でる綿貫さん。
「マリア、
恋人として俺と付き合って」
綿貫さんの親指が私の頬をそっと撫でる。
「ゆくゆくは結婚も見据えて交際したい。
俺はそう思ってる。
マリアは、どう思う?」
綿貫さんの背中に回した手で綿貫さんのジャケットをぎゅうっと掴む。
「そんなこと……」
決まっている。
初めから。
決まってた。
綿貫さんみたいな人ではなく、綿貫さんの恋人になれるなら
私は
今すぐにでも夢を現実に変えたい。
エレベーターが最上階についた。
扉が開く。
夢の扉が開いたように私には思えた。
先に降りた私は、降りてからくるっと綿貫さんに向いた。
「綿貫さん、
恋人になってあげてもいいですよ」
綿貫さんのことが好き。
綿貫さんには、私といることを楽しんでもらいたい。
「ぁぁ、出来たらそうしてくれないかな」
私と手を繋ぎ、わざと下手に出てくるオトナな綿貫さんが好き。
エレベーターから降りた綿貫さんのうしろでゆっくりと扉がしまった。
綿貫さんの手をとり、恋人繋ぎをして廊下を並んで歩いた。
「わかりましたよっ。
仕方がないので、
今夜は綿貫さんの恋人になってあげます」
「今夜以降は?」
「うーーん」
もったいぶって、返事をためる。
綿貫さんに微笑まれてしまうと、ついつられそうになる。
「考えときますっ」
本当は、すごく嬉しくて仕方がない。
私は綿貫さんへ抱きつくと同時に、首に手をまわし背伸びしてキスをした。
スィートルームの部屋の前。
慌てて待ちきれない思いが弾けたキス。
綿貫さんが好き。
初めてのキスもハグもソノサキも相手は全て綿貫さんって決めていた。
ずっと夢みてた。
だから、この先に面倒なことが起こっても
この選択を後悔したりしない。
私の恋人は、
今夜も
もちろん今後も綿貫さんがいい。
fin