交錯白黒

俺と恋藍は逃げるようにアメリカを発とうとしたが、それは抗えない圧により中止となった。

その友人が、いつのまにかに俺たちのDNA検体を採取していて、何が何でもクローンを作ると頑として譲らなかったのだ。

もし、今逃亡すれば命は無いと、そしてクローン作成の罪は転嫁させると、脅しもされた。

全て、俺のせいだった。

甘い助けに縋ることしかできず、自分から何か行動は起こさなかったから。

だから、一つだけ約束をして貰った。

作るのは、恋藍のクローンだけ。

俺のクローンは、絶対に作るな、と。

友人の狙いは分かっていた。

恋藍のクローンなんて口実で、本当は俺のクローンを渇望していたのだと。

だがもしそんなことが公になれば、世界中の遺伝子研究者達が黙っていないだろう、見物に来るだろう。

ほぼ100%、聞き入れてもらえないとわかっていたが、水一滴ほどの希望に賭けたかったのだ。

こちらでは、第一子である瑠璃がアメリカ滞在中に誕生し、その一年後、第二子である天藍が生まれた。

2体のクローンは天藍と同年に生まれた。

案の定、奴は約束を守らなかった。

その心労の為か、割と安定していた恋藍の病状が急激に悪化し、そのまま入院し手ドナーが見つからないまま亡くなった。

勿論、成長促進剤を投与したってクローンの成長は間に合わない。

俺はタバコと酒に溺れ、深く化膿した傷を舐め、罪悪感に苛まれ続けてついには無気力の域に到達した。

脱力感が物凄く、肩に何か載ったように全身がだるく、何もやる気が起きない、半ば鬱になっていたかもしれない。

恋藍が亡くなり、3ヶ月程経った頃だっただろうか。

櫻子から連絡があり、天藍と恋藍のクローンを預かりたいと申し出てきた。

何故かと尋ねれば、恋藍がそう遺言を遺したのだそう。

子供が四人もいればそれだけ負担が大きく、さらにそのうち二人はクローンで、黄金の血を持つ人間は3人もいる。

何かの研究機関に襲われたっておかしくはない状況で、幼い子供四人を大人一人では守りきれない、俺もそう思った。

ただ、そのとき琥珀以外のクローンはまだ入院中だった。

  
< 223 / 299 >

この作品をシェア

pagetop