交錯白黒
俺と恋藍は逃げるようにアメリカを発とうとしたが、それは抗えない圧により中止となった。
その友人が、いつのまにかに俺たちのDNA検体を採取していて、何が何でもクローンを作ると頑として譲らなかったのだ。
もし、今逃亡すれば命は無いと、そしてクローン作成の罪は転嫁させると、脅しもされた。
全て、俺のせいだった。
甘い助けに縋ることしかできず、自分から何か行動は起こさなかったから。
だから、一つだけ約束をして貰った。
作るのは、恋藍のクローンだけ。
俺のクローンは、絶対に作るな、と。
友人の狙いは分かっていた。
恋藍のクローンなんて口実で、本当は俺のクローンを渇望していたのだと。
だがもしそんなことが公になれば、世界中の遺伝子研究者達が黙っていないだろう、見物に来るだろう。
ほぼ100%、聞き入れてもらえないとわかっていたが、水一滴ほどの希望に賭けたかったのだ。
こちらでは、第一子である瑠璃がアメリカ滞在中に誕生し、その一年後、第二子である天藍が生まれた。
2体のクローンは天藍と同年に生まれた。
案の定、奴は約束を守らなかった。
その心労の為か、割と安定していた恋藍の病状が急激に悪化し、そのまま入院し手ドナーが見つからないまま亡くなった。
勿論、成長促進剤を投与したってクローンの成長は間に合わない。
俺はタバコと酒に溺れ、深く化膿した傷を舐め、罪悪感に苛まれ続けてついには無気力の域に到達した。
脱力感が物凄く、肩に何か載ったように全身がだるく、何もやる気が起きない、半ば鬱になっていたかもしれない。
恋藍が亡くなり、3ヶ月程経った頃だっただろうか。
櫻子から連絡があり、天藍と恋藍のクローンを預かりたいと申し出てきた。
何故かと尋ねれば、恋藍がそう遺言を遺したのだそう。
子供が四人もいればそれだけ負担が大きく、さらにそのうち二人はクローンで、黄金の血を持つ人間は3人もいる。
何かの研究機関に襲われたっておかしくはない状況で、幼い子供四人を大人一人では守りきれない、俺もそう思った。
ただ、そのとき琥珀以外のクローンはまだ入院中だった。