交錯白黒
ラピスラズリは深く、海より濃い濃紺に金色の粒が舞っており、それは美しい夜空のように見えることから、宇宙を象徴する宝石となっている。
9月と12月の誕生石だ。
アンバーは琥珀で、キラキラと光に当たると樹液のような黄金が四散する、透明感のある飴色、だが今すぐにでもとろりと溶けそうな蜂蜜色にも近い色をしている。
アンバーは正確には鉱物ではなく、恐竜時代に木の樹液が地下で化石化したもので、その中に昆虫などが閉じ込められているものは特に貴重なんだそうだ。
そのアンバーの中には、ブルーアンバーと呼ばれる種類があり、普段は普通のアンバーとかわらないのだが、紫外線に当たると青や青緑に光る。
その様子は、インディゴブルーを飴色の液体に注ぎ込んだようにミステリアスに混ざり合い、あの煌めく蜂蜜色が星屑のように散らばる様子から、僕の主観だと、どことなく見た目がラピスラズリに似ている。
アンバーは6月2日、ブルーアンバーは、5月25日の誕生石だった筈だ。
ラズライトとテーナは何かすらわからない。
「僕、ラピスラズリとアンバーしかわかんないや」
欧米の人がよくやるイメージの、肩を竦める戯けたポーズをとると琥珀は前置きもなく、話の核心から喋り始めた。
「ラズライトには2種類あって、Lazulite とLazurite。ライトの部分の綴りがlかrの違いだな、お前なら発音でわかるだろ。Lazuriteは和名が青金石、Lazuliteは和名が天藍石。後者は、如月の下の名前と漢字が同じだ」
「それって……!」
ラピスラズリの和名は瑠璃。
アンバーの和名は琥珀。
ラズライトの和名は天藍石。
僕達3人の名前が含まれている。
つまり、あと一つ残っているテーナというものが宝石ならば、その和名と同じ名前を持つ人物がもう一人のクローンである可能性が非常に高い。
「じゃあ、テーナは?」
「俺は知らない。スマホで検索かけてみたが、宝石らしきものが出てこない」
「超希少な鉱石でほぼ誰にも知られてないとか?」
「かもな」
「でも医者の親父がそんな希少な鉱石、知ってるのかな。……あ、そういえばパスワードがわかるって、どういうこと?」
「ああ、それは……宝石とかって、誕生石?みたいなのあるだろ?この順番にその日にちをいれていったのがパスワードになるんじゃねぇかなと思ってな」