密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
『なるほど、飲食系……だからこんなに美味しいお店をご存じなんですね』
そんな俺の胸の内を知る由もない雛子は、無邪気に笑ってロール寿司を口に運ぶ。
『気に入ってくれてよかった。ほら、もっと食べて』
『玲士さんも食べてください。さっきからワインばかりです』
『ああ……魅力的な女性が隣にいると、つい緊張して酒に逃げてしまうんだ』
苦笑しながらそう言うと、寿司を咀嚼していた雛子はゴホッとむせた。思っていた通り、口説かれるのには慣れていないらしい。
彼女は目を白黒させてワインを呷ると、照れているのか酔いのせいなのか、頬も瞳もほんのり赤く染めて俺を睨む。
『子どもをからかわないでください』
『あいにく全部本気だよ。それに、子どもだと思っていたら誘わない』
『そういうことをサラッと言うから嘘っぽいんです』
どうやら彼女はあまり俺を信用してくれていないようだが、だからといって脈がないわけでもなさそうだった。
不機嫌そうに口を尖らせてはいるが、瞳には切なさを溶かしたような涙の膜がうっすらと張っている。