アイツの溺愛には敵わない
「ごめん。じゃあ、お願いしてもいい?俺、手先を使う細かい作業が苦手なんだ。家で姉貴に教わりながらやった時も、ボタン一つ縫いつけるのに一時間ぐらい掛かったから」
「でも、針に糸を通すの凄く早かったよ?」
「それは偶然。俺自身も内心ビックリしたぐらいだから」
そうだったのか…。
普段の高塚くんを見ていても、あまり不器用っていう印象は無かったんだけど…。
少し意外に感じながら、苦笑いしている高塚くんから制服とボタンとソーイングセットを受け取った。
まあ、誰にだって得意不得意はあるもんね。
颯己も料理はめちゃくちゃ得意だけど、裁縫は苦手だし。
私が唯一、アイツに勝てるのは裁縫ぐらいだと思う。
とは言っても、私もそんなに上手くはないんだけどね…。
あ……。
そう言えば、小学校や中学校の家庭科の授業で、裁縫の実習がある日は異様にテンションが低かったな、颯己。
仮病つかってサボろうとしてた時もあったっけ。
……って、なんで脳内で颯己の昔話に花を咲かせてるんだ私は。
今は目の前のボタン付けに集中しなきゃ。