綾川くんが君臨する
✩⌢᷇


ぐいぐい引っ張られながらたどり着いた放送室。

いざ扉を開けようとした直前、わたしは正気を取り戻した。


放送室という名の密室に連れ込まれたら最後、手を握られただけで理性が溶けてしまうわたしはもう、完全にいろいろ終わる気がする。



「やっぱり綾川くんを中には入れることはできない……ので、帰ってくれませんか」

「今さらなにを」

「だって綾川くん部外者だし。……あと、今は……ふたりでいたくない、っていうか」


流されてばかりじゃだめ。たまには強気で本当のことを言わないと。

そう思って、うつむきながらなんとか言葉を紡いだ。


「……俺が、風間だったらよかった?」


わずかな沈黙ののち、落ちてきたのはそんな声。


「なんでここで風間くんが出てくるの?」

「お前は風間が好きなんでしょ」

「え、あ……」


そういえば。今日の休み時間に、綾川くんに風間くんが好きなのかと聞かれて……


──『好きだよ、少なくとも、意地悪な綾川くんよりは』

売り言葉に買い言葉てきな感じで、そう返事をしたんだった。

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