綾川くんが君臨する

「相変わらず、さいてい……」

「もうやんないって。満足したし」


「満足? 何をもって……?」

「試しに泣かせてみた女に微塵も心が動かなかったこと。それどころかウザったくてだいぶイライラしたこと」

「ええ……」


“満足”って言葉の意味知ってる?

なんてツッコミは、もう埒が明かなさそうなのでとりあえず喉奥に沈めた。

もうやだ。
こんな頭オカシイ人のこと、好きでいたくなんかないのに。


「どうやったらお前の機嫌直る?」

「……今すぐ離れてくれたら」

「無理。俺も今あんま機嫌よくない」

「な……、はあ?」


たった今“満足した”とか言ってなかった?

そもそも今の会話の流れからして、俺も、とか言える立場じゃないでしょ。どうなってるの。


好きだからなんでも許せるわけは、ないんだから。

そう、いくら、誰よりも、好きだからって……


「だから、今から俺と放送室行こ」


こういうふうに、恋人にするみたいにやさしく手を取られたからって、許せるわけが……

わけが……


────ああああもう!

なんで握り返してるの!? わたしのバカ!!!
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