綾川くんが君臨する
景色が斜めに傾いて、その様子がやけにスローモーションで流れて。
そのわずかなあいだに、宙に投げ出された体が頭からまっさかさまに階段の下へ落ちていくイメージが脳裏をよぎって。
あ、これだめなやつ……───
そう思った瞬間、ふっと気が遠のく気配がした。
だけどその刹那、
「──咲綾」
すぐ耳元で低い声が響いて、意識が引き戻される。
「……ちゃん、なにやってんの」
吐息交じりの声。低くて、冷たくて、かすかに震えているような。
ゆっくり目を開ける。踏み外したはずの足は、きちんと地面についている。
そして、わたしの体は、綾川くんの腕によってがっちりホールドされていた。
どうやら間一髪、後ろから抱きとめて助けてくれた……らしい。