綾川くんが君臨する
ぞくり、背筋に冷たいものがはしる。
わたしを映している瞳の奥はブラックホールみたいに真っ暗で、ただただ静か。
命のぬくもりが、ぜんぜん感じられない。
『なあんて、冗談だし。
ワハハ騙されてやんのーー』
とか、いつもみたく言ってくれたらいいのに、そんな気配はナシ。
ひょっとしたら、と思う。
ひょっとしたら綾川くんは、わたしを抱いたまま本当に身を投げようとしてるんじゃないかって。
「……死」
にたくない。
一応、そんなセリフが喉元まで上がってきた。
こういうとき、一般的にはこんな感じのセリフを返すのが正解だと思う。
だってこれっていわゆるアレみたいなやつでしょ、そう、えっと──ムリシンジュウ。
ヤバい。トンデモヤバ男すぎる。
早く拒絶しなきゃいけないのに。
言葉が出てこないのは、恐怖で喉が凍てついてるから……ってことにしたいけど。
実のところは、
この人のことが好きだから……だ。
わたしはいつだって、綾川くんが好きだから逆らえない。