急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

「はい、実際チョロいじゃないですか。
その後、池澤氏と三吉涼香さんは、会長と社長からの指示で東南アジアの支社に転勤になりました。
当初『何で私が!』と三吉さんは大変御立腹で、周囲のご友人達に『慰謝料をたんまり分捕った後、すぐに離婚して日本に戻る』と出発前に、これまた飲みの場で宣言していたそうですよ。
ですが、二年経ってこちらに戻られる少し前に離婚されたんですよね。三吉涼香さんは、そのままあちらの国に残るということで…池澤氏お一人で帰国されたとお聞きしました」

「ああ、俺はずっと別れたかったんだが…なかなか慰謝料の額で折り合いがつかず、あの女も別れたくないとグズグズ泣くから…」

「……申し上げにくいのですが…元奥様はあなたとあの国に行って結構すぐに、あちらの支社の現地スタッフの男性と『運命の恋に落ちた』と、SNSで堂々と発表していらっしゃいましたよ。池澤さんは、元奥様のSNSとか、一度もご覧になったことなど無いのでしょうね」

「興味が…無かったから…」

「そうでしょう、そうでしょう。でも迂闊でしたね。興味が無いにも程があります。それでも離婚したさに、結局は相手の言い値の慰謝料を支払ったんですか?」

「悪いか⁉︎」

「いいえ、別にどうでもいいです。あなた方が慰謝料をまず払わなければいけないのは、加納亜里砂様にではないのかとは、大いに思いますが…まあそれは後ほど。
では教えて差し上げましょう。なぜ三吉涼香さんが、あちらに行ってすぐに運命の恋に落ちたのに、あなたとの離婚を二年近くも渋ったのか…」

「⁉︎」

「『夫がどうやら、帰国後会社を辞めて独立することを考えているらしい。そのための準備資金を随分溜め込んでいるようだが、その口座の暗証番号がわからない。わかったらこっそり全額引き出しておいて、素直に離婚に応じ、ついでに慰謝料ももらい、あなたとずっとこの国で暮らすわ』
運命の恋のお相手の現地スタッフの男性に、三吉涼香さんは寝物語でそう話したそうです…」

「……は…?」

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